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“52ヘルツのクジラ”


52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。だれにも届かない歌声をあげつづけているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。

(町田その子『52ヘルツノクジラタチ』)

 

人も、その声の周波数があまりにも違い過ぎるから、コミュニケーションがうまくいかず、意思疎通も合意も理解も共感もままならないのではないかと思う。ネグレクト(児童虐待、育児放棄、義務不履行……)の被害者への共感と再生をテーマにしていて、あなたたちの「孤独」を少しでも癒すのではないかと、双子の姉妹や「発達障害」の塾生たちに、この本をプレゼントする。

「私が産んで私が面倒見てやっている、私の子じゃん。どうしようと私の勝手でしょ。」

(ALSの父親の介護を押し付け、その死に)「こいつが代わりに死ねばいいんだ。」

こんなことを平然と口にし、三歳児の男の子の舌にタバコを押し付ける折檻をやり、ためにその子はしゃべれなくなる。――信じがたいことだけれど、昨今の事件が、それを実証している。ほかに、トランスジェンダーや男性の身勝手、女性の決めつけの被害や加害を扱って、よくまあまとめたとものと感心するが、社会問題を扱って、「考える」きっかけになると思ったので。

ただ、わたしは、最初に触れたように「52ヘルツのクジラ」が、いまは多くいるように思うのだ。うまく会話ができない人、ひとと協調して働けない人、いつも怒っている人、手紙一つ書けない人、会ってじっくり話し合えない人……。一つには、この小説に出て来るような、都会でも地方でも閉鎖的で寛容でない世間があるからであろうし、「格差社会」とグローバリズムの中で、功利的で、金儲け最優先の気風が吹き荒れているからであろう。また、決めつけと断言が横行し、「考えなしの善意」(『52ヘルツのクジラたち』)が猛威をふるうからであろう。さらには、分かってはいるけれど、多忙と混乱を言い訳に、ちっともその対処してこなかった結果であろう。

だから、わたしは、言葉の学びを通して、「国語」への理解を深めることによって、人々の「声」の周波数の調整をやろうと思う。具体的には、わたしと話すこと、「国語」について学ぶこと、一緒に本を読むこと、詩や散文を読み、コメントをすること、そして書き出すことなどを通じて、「孤独」を解消し、「共感」の海へ、再出発していきたい。

昨日は「重陽の節句」。朝晩、虫の鳴き声が聞こえてくるようになった。まずはいろいろな「声」をキャッチしたい。(9/10)

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