電車の中で
三鷹駅、コンサート後に乗り込んだ車両で1席だけ空いていたその隣は、肩までの黒髪の美しい男(ひと)でした。女性かと見紛う程でした。酎ハイの大缶を片手にした佇まいは、捻くれた様子もなく何処か品があるので嫌な感じもなく、その人の右隣に座るのも憚れるオーラがありました。暫くすると私の右席が空き、そこへすかさずサラリーマン風の男が座り込みました。もう一人若い女性が座りたそうな感じでこちらに足を向けていたのですが、我先にその男が座りました。代わってあげようかと考えている内に離れたところの席が空き、そこにその女性は座ることが出来ました。しかしながら、右隣でスマホの動画に見入る男を腹立たしく感じるのが抑えられない自分でした。また、すぐに代わってあげなかった自分にも悔やまれる所がありました。ふと反対側の窓をみやると、窓に映ったその隣の美しい男性が窓越しにこちらを見ていました。テレビで見たことのある俳優でした。私が気を揉んでいた一部始終を眺めていたようです。チラシを渡そうかと考えましたが、あまりの荷物に取り出すのも困難で渡しませんでした。その俳優は人の観察で電車に乗っているのかとその時は感じました。何処か達観して人を見ているようです。そして新宿に着くとサッサと立ち上がって行かれましたが、私は只管悔しい気持ちが湧いており、昨日になってもそれが消えないでいました。今振り返ると特殊な世界に身を置いている人です。伝えれば良かったのにと悔やまれています。と言うのも、以前、京都で面白がって絡んでくる垢抜けた韓国人青年二人とそれを見守る普通の青年二人があり、後から有名な歌手だったのでは?とテレビを見て思ったことがあります。ある韓国人歌手の事件のニュースで、あの時絡んできた人に似ていたようだったのでした。もしそうなら、普通の青年はマネージャーだったのだろうとあの時の少し離れた所で見守る様子から一人合点がいっておりました。この韓国人青年は英語が通じなかったのですが、それでも高句麗のことを一所懸命に話す私を面白がっていた様子でした。もしその青年ならとても残念な事件で、今回も何か引き合うもので隣に座していたのなら悪いことをしたと感じました。これも独りよがりな傲慢なことですが、常に心が晒であり、人のためにあらんと感じます。
