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詩:藻川散策


〔人の文章を読んでいたら、どうにも書く気が失せてしまって。私が悪いのですが……。〕

藻川散策

いつも通勤車内から見ては、気になっていた一筋の緑地

武庫川を渡って、尼崎の競艇場の近く、藻川という濁った流れがある

工場と団地と、いかにも場末という感じのうらぶれた市街が続いていて

いきなりわけのわからない叫びを上げている浮浪者に出くわしたりする

まだ暑い午後、思い立って、「歩く」ことの再開のために行く

小さな公園が点在し、カラスやハトや雀がたくさんいる

河畔のベンチに休んでいる人、犬を連れて歩く人、自転車のおっさん

淀んだ汚い川ながら、黒い鯉が沢山いて、やがて水門があり暗渠に

まだ先月の山行で痛めた右ひざの不具合が残り、気がかりではあるが

深く考えれば分からなくなることばかり、深く思えば自分を見失う

さりとて、いつも内面の輝きと、明るい表情は、失いたくないもの

どれだけやれるのか、どこまでいけるのか、どうしていくべきなのか

それでも少し風が立って、遠く六甲連山が輝き、心身が安らぐ

わたしもベンチの人となり、だれかに話しかけたいような気分に

人工的なオアシスに、野球する少年の声が届き、現実がそばにあり

土曜日の午後、けだるい町、数キロの河畔緑地、動きを止めた家々

河口近くの「蓬莱湯」という、それでも天然温泉に入る

番台にいる耳の遠いおばあさん、話しかけても黒い眼で見つめるばかり

わりと豊富な茶色い湯に浸かれば、何か遠い旅の地にでもいるようにも

こういう「空虚」や「空白」や「空気」があって、生きているのだと知る

 

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