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七転び八起き


最近の母から聞く話は笑うというより、なるほどなと思うことが多いです。お喋り九官鳥(施設のスタッフの男性ですが、いつの間にやらお喋り男から呼び名が変わっていました)は、口の利き方を知らないから説教したと言います。「お世辞でもいいから、人が喜ぶことを言うもんだ。病気のことを言って、だからどうするんだ。年取ってる分、あんたたちより沢山経験している。年寄りだからといって馬鹿にするんじゃない」はっきりと言う母に対して、顔に似合わず怖いと言われているそうですが、母の言葉には筋が通っています。「七転び八起きだよ。七回泥にまみれても、八回いいことある」施設の居間で話すお婆さん同士の会話を聞いて、そうだなと思ったそうです。最近、一人で野っ原にいたり神社の裏で寝てたりする怖い夢は見なくなったと言うので、理由を聞きました。すると毎晩眠る前に、気になることは亡くなった父に声に出して言うのだそうです。この間は父が現れたので「あんた、何やってんだ。娘が一人でこんなに頑張って働いて私の面倒看ているのに、男親として恥ずかしくないのか」そう言うと、父は黙っていたそうです。人は死ぬと口が利けないと母は言います。翌日、父は段ボール紙に文字を書いて見せたそうです。私たち二人を残して死んでしまったことの詫び、今の父の状況を教えてくれました。更に母に対して「お前もいつまでもグダグダしていないで、余計な心配ばかりして寝てるんじゃない。気をつけて少しでも歩くようにしろ」と、発破をかけられたそうです。だから私も頑張ると言います。思わず涙ぐんで母を見つめる私に、「夢だっていいじゃない」母はそう言いました。何もかも分かっているのです。「七転び八起き、いい言葉だね」母の穏やかな表情とやわらかな声に、「七転び八起き、本当だね」私も言葉にした瞬間、あたたかなものが胸いっぱいに広がりました。一週間に一度ではありますが、かけがえのない大切な母とのこの時間に感謝いたします。ありがとうございます。

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