秋風の中のコーヒー
八坂の塔からの秋風が「高麗ギャラリー・カフェ」の室内を通っていく。「コマゲシャ珈琲」のまろやかさが、まるで薬湯のように体内に染み込む。イダキサウンドが思いを深め、なおかつ読書を進める。わずか15分ほどの至福のとき。世俗的な意味を越えた充実感と、わが身の幸運を思う。
木曜日の放課後、京都女子高校での受験講座があり、四条河原町から八坂神社を経て歩いていく。平日にもかかわらず、街は外国人と修学旅行の学生たちであふれている。ハン・ガンの小説『少年が来る』を阪急の車内で大分読んでいた。光州事件のことは以前から気になっていた。軍隊が同胞を無差別に殺害するなんて、もう考えの外だった。「人間は、根本的に残忍な存在なのですか。」という問い掛けに答えは出ないが、そういう内面の「悪」をときどき小さくすることはできると思う。読書も秋風も珈琲も!(11/15)