寒気晴天!
登るにしたがって、熊笹が白い粉のような雪で覆われ、ブナの木の樹氷が日に輝き、怪しいまでに美しい。昨夜来の寒波がクリスマスの翌日を、しみこむような美しい休日にした。11/23以来の山歩きだ。芦屋から西おたふく山を経て、六甲最高峰に至る。なにかと多事多忙で、9月以来の頻繁な山歩きの賜物である「体調の良さ」と「心性の美しさ」という貯金を使い果たしそうになっていたが、やっとまた英気を養うことができた。
今日は、二浪中の塾生を連れて行った。かれは、精神不安定で、すぐに「やる気」を失い、引き籠りがちになるのだったが、「とにかく大学生になる。」「親元を離れ自立する。」という二つの目的を立てて、やっと「受験」に正対させることができたのだった。両親の無理解はあきれるほどで、願書の用意から指導してやらねばならなかった。そのかれが、稜線に出た展望ポイントで、じっと佇んで動かない。
「心がすっきりします。」つぶやくようにかれが言う。
たしかに、樹氷の枝越しに広がる展望は、まるでドラマを見ているような感動をもたらす。阪神間の家並はともかく、遠く大阪湾が一望でき、葛城連峰や和泉山脈が青く起伏し、海の白波の向こうに淡路島がかすんで見える。白い雲が市街のビルのところに下りて行こうとしているし、人間の言葉とは違う「物語」がこちらの胸に轟いてくる。それは前進への誘いでもあり、生きる意欲の喚起でもあった。