母の気概
「お腹が空く」先週から母は、よく食べるようになりました。昨日「なぜ 」と問うと、「たらい回しされることに慣れた」と答え、思わず苦笑しました。お泊まり中心ですが、週末に自宅へ帰ってくることを思いながら「たらい回し」と言う母の言葉が胸に響き切ないです。体重が減ったせいか、お泊りの時に栄養ドリンクが1日1本出るようになったそうです。美味しいからつい飲んでしまうらしいのですが量が多いのか、かえってお腹が緩くなり、今は様子見と教えてくれました。補助的に利用するのは嬉しいですが、母の体に合った使い方をしていただければありがたいです。ドリンク剤でなく、やっぱり顎を使って食べるのが一番だと母と話しました。幸い母の食欲があるのが救いです。
節分の豆まきをしたと教えてくれました。「よく喋る男」母がそう呼ぶ男性職員が鬼役で「傍に来た時に、紙でできた豆を思いっきりぶつけてやった」と聞き、思わず彼の顔が浮かび「やりますなぁ」と大笑いしました。また、「やるな」って言ってるのに職員にやられるから、「やるなって言っただろう」と大声で怒鳴るそうです。「顔に似合わず、あの人は怖い」と噂がたって他の人に聞かれるから、ちゃんと理由を教えるんだそうです。淡々と話す母に「いいぞ〜」と、またしても大笑いです。
今までベッドの下から出そうともしなかった左手を、昨日母が初めて出しました。そして、いつも右手で行っていたテーブルの上の錠剤を取ろうとするのです。指が上手く動かないから、なかなか掴もうとしても掴めません。黙って見守りながら少し指の位置を直すと、やがて自分で掴んで薬を口に入れました。「やったね」と拍手しながら涙が滲みます。脳梗塞の麻痺で関節が曲がったまま固まり、痛くて開かない母の左手を見つめました。先生のピアノを聞いたオリーブオイルで、マッサージを始めながら「あきらめないぞ」心に誓いました。先週とはまるで違う母の気概、ここにありです。またしても、母から学ぶ今です。ありがとうございます。