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“例文つくり”


「引き籠り」や「発達障害」などで、言葉を失っている、発言力が弱い人たちに、どういうレッスンが有効か。手探りの毎日だ。昨日も、

「きずな」「期せずして」「奇想天外」「気息奄々」「忌憚のない」「几帳面」……これらの「日本語チェック」を語彙力養成にためにやっていたのだが、大きな気づきがあった。それは、「几帳面」を「物事を、隅々まで気を配り、きちんとするさま。」という意味を知ることや、元々建築用語であり、「几帳の面のように型に合っていて、きちんとしている」という意味が語源と知ることでもない。

「じゃあ、最後に、これらの言葉のどれかを使って例文を書いてみよう!」とわたしとしては何でもないことと思っての課題だったのだが、それが受講生はできないのである。えらい大変なことのように、鉛筆を握りしめて、呻吟している。見かねて、「期せずして、理事長に選ばれた。」「親子の絆を断ち切って、家を出てきてしまった。」「どうか忌憚ないご意見を!」など、気軽に使ってみればいいじゃないか、と笑うのだが、反対に、「どうしてそんなにすぐ浮かぶのですか」とあきれられる。なぜか作れない。思いが至らない。結局、その場ではできず、宿題にしたが……。(でも「宿題」でやって来てもらっても、わたしはうれしくないのだ。その場で、いまの気持ちを、言葉に助けられて、表現してこそ、力になると思うから)

後で、ここが一番のポイントと考えてしまう。いくら学んでも、自分の力でそれを使ってみなければ何にもならない。すぐにストロークを返さねば、表現力も理解力もつかないということ。これは分かり切ったことかもしれない。しかし、そこまでやらないとだめなのだということが分かった。自分にはいとも簡単なことでも、受講生には、それが大きな壁なのだとわかった。

今日も神戸で表現の会があって、参加してきたが、われわれのやりたいことは、演奏を聴かすことでもなく、技量を誇ることでもなく、プロパガンダに徹することでもない。だれでも気軽に、前に立って、歌い、発言することだ。上手下手やテクニックの有無ではなく、自分でも表現してみることだ。しかし、一度越えてしまえば、何でもない壁でも、多くの人には、非常に高い壁のようだ。ひとりが安倍元首相の政治を批判して、つぎのように歌っていたのが耳に残る。

♪忖度して、忖度して、損得勘定ばかりで進めるから、国民は後ろ向き……

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