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丁寧な歩きを経て


六甲全山縦走というのがあって、塩屋から宝塚まで50キロほどを一日で走破するイベントがあり、神戸市主催で毎年行われている。わたしは、そういう決められた山歩きやイベントが嫌いで、参加しようとも思わないが、このところ三週間連続で、「全縦」のコースを西から東へ丁寧にたどっている。昨日は、鵯越から再度山まで、5時間くらいの山歩きを楽しんだ。前回の「山の街歩き」とは違って、神戸の背山の奥深くをゆっくり歩く。縦走路から離れた再度山のピークも踏んだ。コナラやカシの森を流れる渓流沿いに市街まで下っていく。実は、こういう「丁寧な歩き」こそが重要なのだという気がする。

ついに「丁寧な説明」を果たさず辞任する菅首相のことを考える。どうやらあの人は「丁寧な」の意味が分かっていないらしい。自分なりに一生懸命取り組み、色々考え併せて、ああとしか言えないのだから仕方ない。でもなぜ説明をしないのだろうか。丁寧に言葉を尽くさないのだろうか。全然伝わってこないのは、わたしだけではないようだし、この国の将来に対しての心配が募る。

一方、いだきしん先生の講座は、実に丁寧な話が続く。しかるに、愚鈍なわたしは、なかなかわからない。「丁寧な話」ばかりに関心を寄せて、肝心な飛翔点を見逃してばかり。でも、先生は「言葉」の限界を知っておられて、いくら丁寧に言葉を重ねても伝わりにくいことを承知の上なのだろう。だから、「ピアノ」であり、「場」であり、「精神」であるのだろう。ともあれ、丁寧にたどって、その向こうへ行くしかない。

昨日の山歩きは、「丁寧な歩き」を経て、人生の「高み」に近づけたと思う。

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