いとなみ

本日の東京では今年最後となるいだきしん先生によるコンサートに参加させて頂く誠に尊き刻をありがとうございます。いだきしん先生の奏でる即興演奏の広がる空間に身を置いたとき、自分であって自分ではない遠い遠いいにしえの記憶にある光景が色鮮やかに蘇るが如く大変尊い一音一音でした。天を貫く切り立った峰々が深い渓谷に沿って連なる光景、ほんの僅かな平地に生きる人々の営み、共に生きる人が無事に1日送れるよう朝一番に台所に火を入れる事が愛である事、パンを捏ね発酵し竈の火によって焼き上がる事が恵みである事、白と黒と青よりない厳しい冬にあっても次の春が訪れるまでと助け合い生きたぬくもり…全てはいとなみのうちに愛があり恵みがありぬくもりがあった事に触れ、いとなみを忘れた人間によって憎しみや妬みが生じた事までも…生々しく体感を持って教えて頂いたようで、コンサートの一席に座らせて頂きながら時を越えた悠久の旅をしたような尊い瞬間の連続でした。あまりに尊い事を身を以て教えて頂き、ありがとうございます。

井波　晃