途轍もないコンサート
4日連続のコンサートからアントレプレヌールサロンの感動を経た昨夜、それなのにどうしたことか重苦しくてよく眠れない昨夜でした。今日のコンサートに向かい会場に先生が到着され、一回目のリハーサルを終えて、ピアノが眠ってしまって鳴らない、と先生がおっしゃいました。おとといあれほどに鳴り響いた同じピアノがです。再度調律とリハーサルをくりかえし眠ってしまったピアノを起こしておられます。いったい何が起こっているのか。。それを先生は第一部の開演メッセージにされていきました。「純粋悪」という言葉はあるけれど「純粋善」という言葉はない、それほどに悪は善よりも強く、元気はなくなる、とも教えてくださいました。日本の大事な8月に連続コンサートの階段を一日一日登りアントレを経てついにこの局面を迎えたと感じる今日のコンサートでした。先生のお言葉通り、善の化けの皮の奥にある悪までも素通しに浮き上がってきます。コロナ禍にある社会で起こっていることも、自分のあり方も。自分の中にある悪も隠しようもなく浮き上がっています。頭で善かれと思ってやることは散漫で隙だらけで一番大切な人に負担をかけているのが露わになるばかりです。善かれと思って精一杯やっている迷惑な自分の正しさをどうやって超えるのか。それこそ死んでも変わらないほどのことを。今日、先生の演奏に身をおき、ぜんぶ吹っ飛ばされていきました。渾身の演奏にすべて超えてただ無我夢中で生きること、どこまでも澄みわたり美しく強く「存在顕れ」を経験します。府中コンサート初日から一貫して先生がなげかけてくださっている「存在を問う」とはどういうことなのか、初めてわかりはじめました。
本当にありがとうございます。
東京で8月最後のコンサートへと、どうぞよろしくお願いいたします。堤 康晴