“コミュニケーション”
嫌がって、全く机に座ろうとしない。「多動症」「識字障害」の小3の男子。学校にも行かず、やっと支援学校の特別メニューに通い出したとか。母親がなんとかなだめようとするが、大きな犬とじゃれてばかりいて、「いや!やらない!」と叫ぶばかり。わたしは何も言わず、じっと待っている。心の中では、『こりゃ、だめだ。今日は無駄だったか。』と思いつつ、決して強要はしないでおく。15分くらい経って、やっと隣りの席に座って、「なにするの?」と言うので、「うん。じゃあ、本を見て語り合おう。」と言って、安野光男の『旅の絵本』を一緒に見ていく。これは話に乗ってきた。「旅人はどこにいるかな?」「水車は何に使うの?」(かれは水車を知らなかった!)「ワインを作っているのだ。」(まさかワインを飲んだのだろうか……。)~、しかし15分もすると、また犬と遊びだす。「絵が細かすぎて疲れたのでしょう。」と母親が言う。で、別の絵本を取り出して、もう一度語り合う。この後の「クロスワード」は、紙を破らんばかりに拒否しながらも、やっとすることに同意。字は、わたしが書いてやり、なぞらせる。知識はわりと持っているのに驚く。こうして60分の「授業」が終わった。すると、かれは、実ににこやかな表情で、「ありがとうございました!」と挨拶したのだ。いやなことが終わってホッとしただけのかもしれないが、わたしにかかれとの「つながり」が見えた。勉強よりも、学習よりも、コミュニケーションが優先されるべきだと確信できた。
学校でも、社会でも、「コミュニケーション」こそが「活動」の原点だと思う。