KEIKO KOMA Webサロン

身に宿る力


ヤマハホールでのコンサート第一部「人生」、先生からの問いかけに「始めます」と答え、第一音に集中しました。ところが、赤ちゃんの愛犬が白い診察台に力なく横たわっているのが、突然見えるではないですか。「先生、助けてください!」と泣きすがる私がいました。場面が変わります。大きな目で何かを見つめたまま逝ってしまった小さな身体を抱きしめ、半狂乱で叫ぶ私がいました。「またこれか。なぜ・・・」と、別の私の声が呟きます。突然、また場面が変わりました。まるで母からの電話を予知したかのように、暗闇の中ではっきりと目が覚めました。数秒後、受話器から聞こえた母の泣き声、「パパさんが、パパさんが・・・」救急車の音が近くで聞こえます。私は妙に落ち着いた声で、行き先の病院名を聞きました。12月12日、妙に明るい夜明けの日差しの中、千葉に向かいます。安置所の父は穏やかに眠っているような、柔らかな微笑みを浮かべていました。なぜ、こんなにもくっきりと鮮明に蘇るのでしょうか。一体これは何なのでしょうか。あふれる涙の中、「なぜひとりで生まれ、ひとりで死んでいくのか。耐えられない、悲しすぎる。」と、打ちひしがれそうになった時、先生のピアノの音が燦燦と頭上から降り注ぐ光のように聞こえ、その光が空間を埋め尽くし私をやさしく包み込みます。「ひとりではない」と。あたたかな愛です。涙でグチャグチャなまま、一部が終わりました。第二部「新しい潮流」、「お願いです、その潮流にのらせてください。」すがる思いで第一音に集中します。黄色とグレーのマーブリングのような図形が渦巻いています。やがてそれは龍の形となり、大きく上昇して行きます。昨夜読んだハリーポッターの、巨大なドラゴンの背中にしがみつくハリーのように、私もその龍と共に昇天して行くのです。突然、思考停止したかのように、何もかもが無となりました。「潮流」巨大な渦の中にいました。思わず怖くなり目を開けると、まるで梶を取るかのように先生が全身全霊で、ピアノを弾いていらっしゃいます。生命そのまま、先生と一体となることに集中しました。「先生がいらっしゃる今、この時代」高麗さんの声が蘇ります。無我夢中で、その潮流に振り落とされないようにいるのが精一杯でした。アンコール、何かが大きく変わった強い衝撃に愕然とする中、更にその後のアンコールで、はっきりと内から生まれた言葉は、たった一言「終わった」。清々しさが全身に広がります。新しく何かが身に宿りました。喜びがふつふつと湧き起り、お腹をあたたかく包み込んでくれています。これから、いろいろなことが分かっていく喜びが生まれます。先生、高麗さん、ありがとうございます。

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