やさしい空
雲一つない、きれいな青い空が広がる朝。私の空は、どんな空なのだろう。元旦の先生のピアノの音が広がる部屋から眺めています。
私の顔を見るなり母は「足は大丈夫なの」と開口一番に私に聞きました。母からこの言葉を聞くのは久し振りでした。思わず嬉しくなり「大丈夫だよ」と笑顔で答える私に「嘘でもいいから『家に帰ろう』云って欲しかった。悲しかった。私は邪魔なのかな」一昨日の母の言葉です。新年のご挨拶にと新しい服を持って面会に行った私は言葉を失いました。「できない、できない、全部否定される。やってもいないのに・・・」ここ数ヶ月、「家に帰りたい」と云い続ける母に対して、「でもね」と言い続けていた自分を思い出しました。「毎朝雨戸を開けて、神棚にお水を上げて、お仏壇にお線香とお茶をあげるだけでいい。それだけで気持ちが洗われる。何もただ子供みたいに帰りたいって言ってるんじゃない。半日でもいい」私一人の力ではどうにもならず、スタッフの方をお呼びし二人で母の言葉に耳を傾けていました。母は自分の気持ちを静かに語りました。月一度の面会では、然も慌ただしい時間の中では語り切れなかった母の言葉は胸を揺さぶります。「お前も周りと同じ。話にならない」前回の母の言葉通り、いつから私は母を説得する側になってしまったのでしょう。「家に帰れるように、月曜日に専門スタッフと相談します」母は「よろしくお願いいたします」と頭を下げました。私と二人きりになると、「私は先が短い。あんたは足が悪いから何かあった時に、せめてお茶入れたりご飯を作る予行練習ができるかなと毎日寝ながら考えてる」思わず「ごめんなさい」と小さな母の頭を抱きしめました。母が倒れてから「お家に帰ろう」プロジェクトを立ち上げ動き続けた私は、何一つ諦めることなく実現だけを考えていたじゃないか。何やってるんだ。二度と母に「ごめんなさい」と言うようなことはしないと決めました。空を見上げると、いつの間にか白い雲が水色の空に浮かんでいます。やさしい空です。今日は高麗屋さんにお伺いする日です。最後のお正月休み、よろしくお願いいたします。
