心の声
「捨てられたかと思った。」開口一番、母が口にした言葉でした。私が心配していた通りでした。突然入所したばかりで、たった月一度の十分間だけの面談は、やはり辛すぎます。直ぐにお願いして別室を用意していただき、結果一時間半、母の言葉を聴き続けました。本当の心の声を聴くには、ちゃんと顔を見て向き合うことが必要なんだと、母の声を聴きながら胸が痛くて堪りませんでした。入所してから私とも会えず誰にも聞くことができないまま、でもそんな事があるかなと考えていたと云います。ずっと大変だった私を思い、捨てられても仕方ないと前夜自分に言い聞かせたと静かに話す母。この二週間私がいない中で、たった一人で過ごしていた母を思うと涙が溢れました。手を取ると冷たかったです。詫びることしかできません。事情を話した後、「私を信じてくれる?」と聞くと、黙って頷き「何でも事前に話してね。」一言云いました。母はずっと最初から最後まで静かでした。私が大嫌いだった感情の激しかった母は、どこにもいません。退所と入所の慌ただしさに追い立てられて、一番大事な母のことが抜け落ちてしまいました。それでも、今こうして母が私に話してくれることが嬉しいです。施設の規則は規則で仕方ありません。ですが、その中で私にできることは、直ぐに動き、伝え、実行することです。私がやること、やれること、頭がはたらき提案が直ぐに浮かぶことが、ありがたいばかりです。諦めることだけはしたくないです。現実の状況を見極めながら動いていきます。