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死について


耳鼻科の待合室で、田坂広志著『死は存在しない』を読んでしまう。おかげで、子どもの泣き叫ぶ声も、不親切な医者の態度も気にならなった。最先端量子科学が示す「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」の紹介で、その見地からすれば、「死は存在しない」ということになる。まさに「宇宙から生まれ、宇宙に帰るという生命のストーリー」(高麗先生「盛岡にて」)で、それを科学者が語るので、分りやすく面白かった。著者の前書『運気を磨く』で、ポジティヴ思考の大切さ、言葉が心を変容する(感激・感謝・感動の言葉を!)点への注目に共感を得ていたので余計に。「宇宙の生まれる三段階前の世界」ということも、「量子真空」☞「ゆらぎ」☞「ビッグバーン」☞「宇宙誕生」と理解され、この「量子真空」の次元を、われわれは「大いなる存在」と呼び、宗教では、「阿頼耶識」「アーカーシャ」などと言い、あらためて人間の英知に感嘆させられる。また、すべては「光」であり、「波動」なんだということもワクワクさせられた。「表面意識」「静寂意識」「無意識」「超越的意識」「超時空的意識」という五段階も面白かった。

ただ、それなら表題を「死で終わりでない」とすべきではなかったか(死なない人はいないのだから)という点と、この論説だけで人は変容し、生命を輝かせることができようか、という疑念が残った。これでは頭だけの理解にとどまってしまって、体全体の了解につながらないのではないかと。現実世界での人間の苦悩(戦争・貧困・病苦・老衰・死別…)をどうやって解決していくか、単に意識を理解し、言葉遣いをポジティヴにすることで、人は変容するものか、分からない。わたしは体験と出会いが重要だと思っている。その点で、「いだき」との出会い、「易行道」の体験は、あらためてすごいことだと思えた。わたしは、言葉を通して、その奥の奥の「光」につながるような言葉演習を実践していきたいと思っている。「死」があるかどうかより、「死」と「生」とが一体であるような認識を深めたいものだ。(22.12.9.)

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