詩:などかくは美しき
昨深夜の福島の大地震に驚きました。被災された方や地域のことを思うと心が暗くなります。また、新幹線の復旧に時間がかかりそうなことが気になります。(東北道は復旧したと先ほど知りましたが)交流が分断されることが嫌なのです。昨日書いた詩なのですが、私自身の「再起」の思いを込めて書きました。いま苦労されている人々と共に頑張りたいものです。
などかくは美しき
今歳水無月などかくは美しき。
軒端を見れば息吹のごとく
萌えいでにける釣しのぶ。(伊東静雄「水中花」)
まさに陽春、街に光溢れ、道を行く人々の明るさ
あまり気持ちがいいので、少し街歩き
児童公園の緑陰のベンチで、本を読む――『100年時代の行動戦略』*
「物語」「探求」「関係」を軸に、長寿の時代を生きる知恵について
ただ、まずはこの「命に働く力」を看取することではないか
言葉にすればありふれて伝わらない、いま、ここにいる喜び!
半袖の高校生の首筋の美しさ、子連れの若い女性の声、大きな犬の眼
手に取って持って帰れない、いま世界に感じる愛!
昨夜テレビで見た96歳のおばあさんの笑顔、遠い国の難民たちの表情
などかくは美しき――この気持ちさえあれば、何とか生きていけよう!
すべてのものはわれに向かいて
死ねという、
わが水無月のなどかくは美しき(同上)
詩人は失恋を歌うのだろうが、わたしはもっと現実的な苦悩と困窮
識者は賢い金銭感覚と目先の欲求に屈しないことを説くが、この陽春の光こそ
何ものにも代えがたい幸福、生きる力の源――悪い知らせばかりが入るが
小賢しい象使いのコントロールを嫌って、巨大な象は自由に歩きたいのかも
(象使い=前頭葉、象=辺縁系)
ただわたしは頭も悪くない、「などかくは美しき」という言葉で救済されるほどに
「死ね」とはだれも言っていないし、わたしもまだ死にたくないのだから
わが3月の、16日の、昼の街の、などかくは美しき
*『ライフシフト―100年時代の行動戦略』ⅠⅡ
(スコット&グラットン著、東洋経済、2,021年)