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妙見紀行


妙見口駅から花折街道を経て、上杉尾根を登る。森の中の急坂だけれど、時折涼しい風が吹くので、一気に山を歩く喜びに浸る。「ああ、来てよかった!」という思いに顔がほころぶ。大勢の人が上から下りてくる。みんなろくに挨拶もしない。楽しんでないのかしらん。

しばらくぶりの山行。コロナ禍と酷暑を理由に三か月ほどサボっていたが、やはりまだまだ続けるべし、まずは近場、妙見山からと思って、出かけたのだった。

水分補給をしながらゆっくり登れば、もう体が生き生きと蘇ってくる。九州の方の台風のことは気になるが、「妙見」(北斗七星)に向かっているのだと思うと、悠久の気持ちもにじみ出る。尾根に出れば、眺望が開け、自然を堪能する。
一時間余で、上の駐車場に出るが、そこで失望。「星嶺」とかの異様の建物もなじめないが、鳥居と僧堂とがある不思議、土産物屋が並ぶ俗っぽさ。あまり「聖地」とは思えない。早々に本滝寺に下っていくが、いかにも裏道ぽく暗い感じ。途中大きな鹿に出くわすのが、唯一の救い。しかし、本滝寺では滝行の最中で、スピーカーで「いつもお世話になりありがとうございます!」と大声で叫んでいる。本堂ではわけしり顔にお経を読み上げているグループもいる。あまりにも現世利益を願う、世俗感丸出しの信仰に浸っている人たちに違和感を覚える。黙って山に入り、森林の道を行き、風を身に受け、自然を感じる方が、「宗教」よりも救済されるのに!「人間」を離れてしまったか。

唯一感じの良い係り員に道を尋ね、川を渡り、野間地区へ。いかにも“大阪府のチベット”、里山風景が広がる。妙見山を振り返りながら。「野間の大ケヤキ」を訪ねる。これは意外に良かった。樹齢千年とか、太い幹のケヤキがこんもり山のように見える。バイク族もサイクリング族も、つぎつぎにやって来て、見とれている。野間川沿いに府道を歩く。この辺りは産廃業者が多く、怪しい砕石工場もある。あちこちに「不法投棄厳禁」の立て看板がある。やっと下田尻に出て、「温泉」を見つける。河原に浴室を設け、800円で入湯させている。その管理者が地元の人とヤクザの組の動向を話し合っていた。湯も風景もあまり感心しなかった。能勢はやはり古い田舎なのだ。しかし、人々の意識は都会風に汚染されている。仕方ないけれど、少し悲しく思う。
「バスはないんだ。元の駅まで歩くしかない。」と宣言され、ろくに道案内もしてくれない。霧雨が降り出した国道を一時間半歩いて、黒川を経て妙見口へ。ほんの二三時間のつもりが、七時間近くの本格的な山歩きになる。しかし、十分に山行リスタートはできた。これからは月に二回は登山しよう。

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