遠い呼び声
光のチャームが施された 美しい形のパイプオルガン。静寂の中 いだきしん先生の演奏に高麗さんの御声が溶け込み、身体の深層に音色が沁みていきます。「深い森の中に生まれた光…」。高句麗の誕生を表す音は、木漏れ日のようなクラリネットの温かな響き。そして 先生のギターと高麗さんの五女山城の石垣の詩が一つになり「紛い物に屈することなく生きることが永遠…」との御言葉が響きます。ずっと聴こえる 荘厳な鐘の音。「魂のふるさと…」。この一言に自らと共に息づく魂が救済され、安堵したのがわかりました。一転し、躍動する音に促され顕れた 阿弖流為、蝦夷の魂。前日 いだきしん先生が「太鼓を叩くのは神降ろし」と仰った御言葉が蘇り、天からリズムに乗り ステップしながら降り立つ蝦夷たちの御姿が見え、嬉し泣きです。ガムランにも似た懐かしく湿った打楽器音に 会場を突き破るような 先生の太鼓。そして遠い呼び声のようなリフ…。とても不思議な 全く新しい音楽が鳴る中、次々と神々の到来を高麗さんが語られ 震えるほど感動しました。初めて聴かせていただいた蝦夷の御言葉に嗚咽し、「生きる原点」と仰った白頭山の映像が瞼に今も残っています。東北の地、盛岡マリオスでの 高句麗伝説。語り尽くせぬ素晴らしい時を、真にありがとうございます。
岩村ゆかり