詩:月を求めて
月を求めて
今夜は“中秋の名月”とか、雲の多い残暑の昼間は気にも留めなかったが、
夜、スクーターを走らせて、温泉に行くとき、出会えることができたのだった
はじめ村雲隠れだったが、いつか雲を分けて、薄青い空に美しく輝いている
思わずスクーターを止め、家並の向こうの名月に向かい合い、挨拶をする
月読尊、あなたの光に会えば、どこかで支えてくれている人の存在を思います
月読尊、あなたの光に会えば、意外な幸運が待っているような気がするのです
月読の光に来ませあしひきの山き隔(へな)りて遠からなくに
月読の光は清く照らせども惑へる心思ひあへなくに(万葉集の掛け合い歌)
大昔から、人は夜の月に、昼間とは異なる思いを語ってきたに違いない
現代でも、人は月の光に、宇宙や天体を越えた思いを語り続けているのだ
昼間、あることで、自分の至らなさを持て余していたのだが
夜間、月を求めて、自分の静かな思いも輝き出したのだった