空間に溶け込む生命
8/28 迎賓館でのピアノコンサート。壁と柱の間の端に着席し、いだきしん先生の演奏が始まると 木の壁が振動しうねるように見え、次第に自分の身が壁に吸い込まれ 溶け込んでいくようでした。昨日も館自体が楽器となりピアノと一体に。いつしか全身がその楽器に包まれていました。休憩後に先生が、先生だけが弾かれる迎賓館やIDAKI 各会場のピアノ演奏について、なぜこのようなことをしているのかわかりますか?と話されました。いだきしん先生の演奏される唯一無二の、非日常が創出された空間。ここに身を置くことで日常を超え、自身の中の本来性に目覚める。本来性とは 空間と一つになること、とお聞きし、先日の 存在論 での御話を身体で経験させて頂いているのだ と判りました。存在論では「人は自らの頽落の状態に気付き、本来性に目覚める」とハイデガーが表されている と伺いました。が、いだきしん先生と出会い 先生の演奏を直接 拝聴できる我々は、先生の存在、音 によって本来的に生きることを既に知り学んでいる。そして頽落の状態が自ずと浮かび上り、非本来性を抜け出す。真に凄いことだと、コンサート後半は全身汗だくになっていました。その後 高麗さんの ビデオ講演会収録で、迎賓館での演奏は 女性が支配され潰されてきた状態を癒されていた と伺い、遥か過去、自分の10代に身に起きた出来事がコンサート中に浮かんだことを 想い出していました。正に高麗さんの仰る、作られた偽物のロマンに引っ掛かり 甘美なことと勘違いした挙句、事件に巻き込まれ死ぬ寸前でした。いだきしん先生にお会いでき、昔のことは 記憶の断片だけで 当に自分から無くなっていると思っていましたが、この度、実は奥深く残っていた傷から解放していただいたのだ、とジェンダー講座の衝撃と相俟り 今も呆然としています。「本音」で生きるとは、自分の本来性を解り生きるということ。先生の御言葉を胸に、本日の 高麗さんの講演会を 新たな自分で伺えることが楽しみでなりません。真にありがとうございます。
岩村ゆかり