KEIKO KOMA Webサロン

積み重ねるもの


「どこに行くの」毎週、母が私に問う言葉です。お風呂屋さん(お泊りする施設のことを母はそう呼びます。)と、いつものように答える週末の夜です。昨夜は私と食事をしながら、「今までで風呂屋が1番食事が酷い」と言いました。病院の刻み餡かけより酷い所があるんだと驚くと、全部冷凍食品を温めると言うのです。それでも、朝、昼、おやつ、夕と完食するのは、食べなきゃ他にないからだと言います。週末に母と食べる食事が何より大切な時間と考えていましたが、大半をお風呂屋さんで過ごす母のことをつい考えこみます。「パンでも何でも置いといてくれれば、自分で食べる。だから行かなくていい」昨夜も母は、そう言いました。「そうだね。でもオムツの交換もしなきゃね」そう言うと、母は黙るのです。毎週母と繰り返す会話が、昨夜は何だか胸が締めつけられました。今朝、車椅子で食事を終えると、いつものようにスタッフの方がお迎えに来られました。その方が母を連れて行こうとすると、突然「いつまでも人を頼ってはいられない。自分で、ここから玄関まで歩けなきゃどうしようもない」母が言い出しました。それをやらせてくれないと、不満声に正直驚きました。「せっかくここまで良くなったのに、無理して骨折したら大変ですからね」母が「よく喋る男」と呼ぶスタッフが答えます。が、母の視線は私に向けられていました。「昨夜立つのに、ちょっと時間かかったよね。あれが直ぐできたらいいね」屈んで言った私の言葉に、「直ぐにはできない。針の先ずつでもいいから、やればいい」母は即座に、先生から言われたと言いました。「そうだね。それをお泊りの時にやってみて」黙って母は、私の顔を見つめます。車に乗る準備の間、車椅子から玄関先を見つめ「雑草は強いね。花を咲かせてる」暖かな日差しの中で、花を眺める母に「そうだね。荒れた庭にもたくさん花が咲いてるよ」ほんの数秒、穏やかな時間が流れます。やさしい光に包まれます。車を見送った後、「上っ面なんかじゃ通じない」と胸の内で呟きました。母の気持ちが分かるからこそ、何も言えなくなる時があります。瞬時に返す言葉をどうするのか、私が常に問われているのです。この瞬間、今も、これから先も。あなたは、何を積み重ねていますか。どこからともなく聞こえる言葉に、自分の生き方を問う今です。今日となりましたが、迎賓館コンサートがあることに感謝いたします。ありがとうございます。

KEIKO KOMA Webサロン
東京高麗屋にて
KEIKO KOMA Webサロン
南昌荘にて
KEIKO KOMA Webサロン
比叡山にて