猪名川の奥を深めて
さっき、学校が終わって、(3年生を担当しているので、これでしばらく仕事がなくなる。)一旦帰宅しようと、国道を単車で走っていたら、夕日がまぶしいほどに射してきて、気持ちが煽られるように高揚し、「そうだ!このままどんどん進んでいくばかり!なにもやましいことやずるいことを考えているわけでなく、国語教育を充実させたい、言葉の力を養いたいということ、やりたいことを、いかな困難があろうとも取り組むだけだ!」と心で叫んでいた。
一昨日の「存在論」で、言葉の力を磨き、現存在として、存在を問い続け、疎外から離れ、豊かな人間として生きていくエネルギーを得たし、孤立ではなく、自立して、人とともに生きていけばいいのだ、と強く思えたからもあって、昨日のコンサートは、「言葉の乱れ」を正す原点をはっきりつかめたように思えた。もう、身も心も洗われた、というようなありきたりの言葉ではだめなくらいの大きな感動を覚えた。そして、すぐにひ弱な懸念や心配や空しい計算におたおたしてしまう自分を排除することができた。さらに、こんな素晴らしい機会を持てている自分の幸運を、あらためてうれしく思った。その気持ちが、美しい夕映えに高まったのかもしれない。ありがとうございます。
コンサートの終盤の響きにいると、川の奥を深めて、桃源郷に達したような、懐かしいような、和めるような風景が見えてきた。たまたま知った「万葉集」の3804「かくとのみありけるものを猪名川の奥を深めてわが思へりける」の「猪名川の奥を深めて」の句が、ずっと心にあったものなので、心の奥深くをたずねて行ったから、郷愁的な、原初的な、美しい響きを体で感じたのだと思った。もういちど幼年期からやり直してみたいような気分にも!
(「猪名川の」は「奥を深めて」に掛かる「枕詞」のよし。猪名川は地元兵庫県の川で、百人一首の「有馬山猪名の笠原の」の「猪名野」を流れる川です。)