KEIKO KOMA Webサロン

無限なる人間の可能性


母を見ていると、希望しかありません。たった1週間会わないだけで、まるで状態が変わっているのです。今回も家に帰ると、「ご飯は座って食べる。ベッドの上じゃ、胃が押されて食べた気がしない」と、自分で言い出し隣りの部屋まで歩くと言います。驚く私に、「随分歩けるようになったんだ」と言って体位を変えます。ベッドから体を起こして移動する時に私が不慣れな為、以前教えていただいたことが上手くいかず、2人で四苦八苦しました。「施設で出来ても、家だと上手くいかないのは何でだろう」考える母を見ながら、もっと私が上手にサポートしなきゃと痛感しました。その夜は、ベッドから車椅子に移動してテーブルで食事しましたが、体が楽だとよく食べます。ある日、おやつに真っ白な丸い物が出たので、何だろうとぱくりと口に入れた途端ぐにゃりとして、しまったと思ったそうです。マシュマロでした。私もそうですが、母も好きではありません。半分口にくわえたままでいたら、向かいに座ってる女性が母の名を呼び、ティッシュを手に取って行ったゼスチャーを母が真似て教えます。きょとんとしている私に「口に入れた物が外に出てるから、拭けって身振りしてるんだよ。婆さん、私は今食べてんだよ。余計な世話焼いてないで、自分がこぼすな」吹き出して大笑いです。しばらく口にくわえたまま、そのお婆さんの顔を見ていたと言う母。倒れて以来、以前のような笑顔はありませんが、いつも淡々と話すのでかえってそれが可笑しくもあります。

翌朝は玄関まで車椅子で移動して、いつも母のことを心配して下さっている叔母に電話を掛けました。倒れて以来、久し振りの姉妹は話が尽きません。「気づくと一人、誰もいない野っ原にいる怖い夢は最近見なくなった」と聞こえ、よかったと安堵しました。「前のようには出来ないよ。私も家に帰ってきて、せめて留守番出来るように頑張ってるから。あんたも頑張りな」お互いの体を労わる声が聞こえます。特別養護老人ホームには入れないと、気持ち新たに決めました。その日、母は起床した8時半から、迎えに来た14時半まで6時間も車椅子にずっと座ったまま私と過ごしました。ついこの間まで、車椅子に座ってもお尻が痛いと言って、30分も持たずにベッドに横になっていたのに別人です。母にそう言うと、私を見る母には気負いなんて微塵もない、淡々とした顔で頷くのです。その瞬間、2月に体重が38㎏まで落ちた時、私と約束した2つのことを母はたった2ヶ月で乗り越えたことに気づきました。お迎えに来られた施設のスタッフさんに、朝からずっと車椅子に座っていると伝えると、お泊りの時でもそんなに座ったことはないと驚かれ、とても喜んで下さりました。見事なまでに乗り越え続ける母は、やがて5月になると93歳のお誕生日を迎えます。先生が仰った通り、自ら言葉にすることの大きなはたらきを母を通して学んでいます。そこには無限なる人間の可能性があり続けることに、ただただ希望よりありません。私も母に負けてられないなと、母の姿を見送りながら帰ってきました。亡き父の家の庭は、お水もあげられず草で荒れ放題ですが、大きな真っ白なカラーの花が2つ咲いていました。主の留守を守るように咲く姿に、感謝しかありません。ありがとうございます。  

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