母の薔薇
母の薔薇と呼んでいるオレンジ色の薔薇があります。美智子様が大好きな母の為に、父が家を建てると同時に玄関脇に植えたプリンセスミチコの薔薇と似ているのです。その薔薇が近くの畑に咲いている姿を見ると、ふんわりと微笑む母の香りが漂うのです。心の中で薔薇に呼びかけました。「元気にしてますか。もう12月だよ」「えぇっ、そうなの?」そんな母の顔と声が浮かぶ朝です。「情けない。ここでこのまま死ぬのか」先月、私に放った母の言葉。あの時の眼差しと声が今も胸に焼き付いています。あの日から今月母に会いに行くことが正直気が重いです。母の本音。母の薔薇を眺めながら、突然はっとしました。私だからストレートに云ってくれる。そう気づいたのです。誰にも言えない母の気持ち。毎日独りで胸に抱えて生きている母に、涙が溢れました。だからこそ、私がいる。母の薔薇が気づかせてくれました。元気に笑顔で会いに行きます。そう生きると決めました。母の香りが漂ったように感じる朝です。
