木っ端微塵
迎賓館に到着したら、久し振りに高麗さんの笑顔を拝見できただけでなく、愛麗花ちゃんがお浄めコーヒーを淹れて下さり、とても嬉しいスタートでした。明るく輝く場に風がそよぎ、ガツンと目が醒める先生コーヒーを頂く瞬間、「ここは迎賓館」とありがたい感謝の気持ちが湧き起こります。先生のピアノは、エコー検査のようです。第一音の倍音が、身体中を瞬時に駆け巡ります。自分では意識していなかった、頭の左奥が詰まっていて抜けきらない気持ち悪さがあります。何とか突き抜けてくれないかなと思っていたら、今度は時間割のように分けられたコマ割りが見えます。その小さな四角の中に一生懸命、何かを詰め込んでいました。「ちっぽけだな」と思いながら、先生のピアノを聴いている今の自分が何なのかと考えます。先生の話をお聴きして、納得しました。コンサートで助けて頂いては、また周りに嵌るの繰り返しに正直うんざりしながらも、どこかで甘んじていました。先生が仰る通りです。更に仰った言葉に衝撃を受けながらも、命はどこかで分かっていました。覚悟するように、第一音から身が引き締まります。何を伝えようとしていらっしゃるのか、一音も聴き逃さずについていこうと、意識が働けば働く程遅れます。同時に、そんなことをしようものなら、木っ端微塵に吹き飛ばされる演奏です。人知を超えた凄まじさでありながら、先生の命懸けのお姿の真っ只中にいることは、生きている証であり、躍動そのものです。全エネルギーを身に受け、余計な何もかもが木っ端微塵です。あまりにも凄まじくて、気を引き締めて帰ります。電車のホームから見えた満月の美しさに、目を奪われます。特別な迎賓館コンサートをありがとうございます。