愛の鐘
何故でしょうか、盛岡の会場に向かって外に出るや否や、右側のこめかみが疼くように痛み出しました。コンサートで何が明らかになるのかと思っても、当たり前ですが分かりません。第一部「急性アノミー」「前方に向かっていく内面性」メッセージの言葉が、頭に残ります。突然演奏中にニ、三度位、いきなり前につんのめるようになり慌てました。右手首が疼き出します。ピアノの音は何かをゆっくり、ゆっくり掘り起こしているような感覚です。先生のピアノの音色が変わった時、突然蘇る薄暗い場面。夜中の病院、「大丈夫ですか」私を見るなり息をのむ医師。「帰りたい、家に」消え入りそうな私の声。思い出したくもない、あの夜がフラッシュバックします。「何故、今」複雑な心境で休憩となりました。
第二部「愛を乗せて、銀河鉄道は戻ってきました。」メッセージに涙が溢れてきます。今度は炎が見えます。アゼルバイジャンで見た炎が揺らめいています。やがて、消えて黒くなりました。風が吹きます。あの時のように、風が吹いていました。どれ位経ったのでしょうか。不意に、稲妻のような一撃が胸を貫きました。息が止まるかと思う程の衝撃でした。何事もなかったかのように、また風が吹きます。あの時、DVという言葉すら思い浮かびませんでした。今なら分かる数々の事。今、救われたのです。先生の愛の鐘が鳴り響いていました。世界中に鳴り響く鐘は、愛の風となって駆け巡ります。私と同じ経験をした、たくさんの方たちが同時に救われたのです。コンサートは終わりました。拍手はできませんが、涙いっぱいで先生に頭を下げました。外に出ると、爽やかな一陣の風が吹きました。風が伝えてくれます。感謝を込めて、夜空を見上げました。ありがとうございます。