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幸せ


昨夜、仕事を終えて母の家に帰ったら驚きました。両足を床に着いて、ベッドの手摺りを持って私を待っていました。私が帰って来たら何か手伝おうと思い、よいしょ、よいしょと体を動かしたそうです。初めてのことで嬉しくなりました。気持ちがあれば、何でもできることを見せてもらいました。夕食後に梨を出すと、鼻が効く母は直ぐに「梨のいい匂いがする」と云います。施設でも珍しく梨が出たそうです。小さく刻まれて楊枝が刺してあり匂いも何もしないから、大根かと思ったと云うので大笑いです。母と一緒に梨を食べたくて、買ってよかったなと嬉しくなるひと時です。母のところに父が現れる話をよく聞きます。いつもカーテンの間から遠慮がちに覗いているから、「はっきりしろ」と怒鳴ったら、後ろにいた職員さんがそれを聞いていて上手く誤魔化したそうです。どうしても父が亡くなったと思えないと云うので、それでいいじゃないと答えました。私も母のお陰で随分考え方も変わりました。いつも私の足のことを気にかけて手術のことを聞かれる度に、母は母なのだと頭が下がります。久し振りに色々な話をしました。無表情で能面のような母は変わりました。人それぞれ、一人一人、幸せがあります。その幸せがこれ以上失われませんようにと願う今です。高句麗伝説に向かっています。よろしくお願いいたします。

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新年の桐箱 いだきしん先生の書です。
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