山から生還
とんでもないミスを犯し、危うく死にかけたところを助かり、昨日午後帰宅しました。「登山家」を自認していたわりには、浅はか、無謀な仕儀で恥ずかしいばかりなのですが、正直に伝えて、今後の「力」にしたいと思って、まだ疲労困憊の中、PCに向かいました。
奈良県と三重県の境に台高山脈というのがあり、秘境中の秘境、あまり人の行かない山々があります。その一つの池小屋山に、未知ながら単独行を試みたのです。なに、お天気は快方に向かうだろう、それにそんなに困難なルートでもないだろう、野営一泊で抜けられるだろうと高をくくっていたのです。しかし、一日目は、天気が悪いままで、視界も効かず、目印もいい加減で、ついに二つ目のピークを越えたところで、道を失い、下の沢まで下りてしまいました。そこは急坂をよじ登り、なんとか三つ目のピークまではいったのですが、そこから先がまるで分らない。暗くなってきたので、そのピークでテントを張り一泊。翌朝もガスが掛かって視界不良なので、ここは引き返すべし、との判断は間違っていなかったと思うのですが、そのくだり道で、どうやら西の尾根筋に入り込んでしまったらしい。沢へ下って、向かいの尾根に登りつけば大丈夫、とお天気になってきたのを頼りに、それを敢行したのですが、崖でスリップして、胸と足を強打するわ、300mほどの急斜面をよじ登って、重い荷物に苦しめられるわで、やっと上に出たときはもう2時。そこからが長く、やっとルートを得たときは暗くなってきて、最後の明神平の野営の灯火が見えるところまで来てダウン。だれか女性の声で、「ここでビバーグしたらいいのよ。」という声まで聞こえるものですから、そこにへたり込み、シートとシュラフをかぶって一夜明かしたのです。北斗七星が真上に輝いて美しかったのですが、寒さと心細さでウトウトするばかりでした。昨日の未明、撤収して下山しました。鹿が二匹、怪訝そうにこちらを見ていました。しかし、疲労困憊、足は遅々として進まず、やっと9時に登山口までたどり着き、登ってきた人に携帯電話を借り(自分のはバッテリがなくなってしまったのです)タクシーを呼びました。運転手は、「なんと重い荷物!」と驚き、心配そうに声をかけてくれました。どうやら左肋骨が1本くらい損傷しているらしく、20キロ近い荷物が持ち上げられないのでした。それでもなんとか午後には神戸の自宅まで帰着、洗濯したり、テントを干したりするまでは良かったのですが、もう階段を登れないくらいに節々が痛く、寝込んでしまいました。
もしかしたら死んでしまっても不思議ではないし、それも自業自得で仕方ないことなのですが、今回は「自分はまだ死ねない。」「こんなことぐらい乗り切れる力はあるのだ。」と思うばかりで、その生への執念と自分の根力にあきれるばかりでした。先生がついていて下さるから、何とかなるだろうと、勝手に思い込んでしまいました。お忙しい先生に勝手な迷惑をかけてしまって申し訳ないと思いながら。「反省」と同時に自分の「強さ」に気づいた山行でもありました。(読んでくださってありがとうございます。)