小さな風車
「あなたの誕生日、月が綺麗ですよ。今夜は十三夜ですよ。」18日の夜、携帯の留守電から聞こえる母の声に、つい微笑みが浮かびました。。カーテン越しに眺めていた月でしたが、その声に誘われてベランダに出ると、雲一つない夜空に白く輝く十三夜。解き放つ光に包まれました。いつも夜が早い母は夜空を眺めることはなく、むしろ帰りの遅い私が外から電話しながら、月を眺めて教えるというのに。全く逆で可笑しくなります。素晴らしい誕生日の夜を母との電話で迎えて、嬉しくなりました。そして翌明け方、父の夢を見ました。玄関を見ると、右と左が違う運動靴が並んでいます。明らかに違うのです。間違えて誰か違う方の靴を履いてきちゃったのかと振り返り、「右と左が違うよ。」と言うと、テーブルの前に座っていた父が、澄まして答えます。「それでいいんだ。」もう一度眺めた靴は、カラフルで左右違うデザインなのに、妙に可愛く見えて笑ってしまいました。不思議です。一昨日の盛岡のコンサートメッセージをお聴きし音に包まれていたら、突然そのことを思い出していたのです。あまりにも心地よくて、夢を見ているかのように穏やかで幸せです。東北でのコンサートは、秋田生まれの父のことを、なぜか不意に思い出すのです。やがて、小さな風車が見えます。いくつかの分岐点、過ぎ去りし男の人たちとの分岐点が重なります。止まりそうになっても、決して止まらない私の風車が回っています。更に勢いを増して回り続けています。私の生きる道を見ているかのように、小さな風車が回り続けています。静かな力が湧き起こってくる、盛岡のコンサートでした。オンデマンドで拝聴するのが、楽しみです。ありがとうございます。