嘘偽りなく言葉にする
お正月以来、久し振りに母の元へ行ってきました。部屋に行くなり母の前で「お風呂が嫌いで、いつも拒否されます。特に洗髪を嫌がられます」初めてお見かけした男性スタッフの方から云われました。「本人に聞いてみます」とだけ答え、母に聞きました。「オムツしてるから体はきれいにしないと、管入れるの嫌だよね」母が頷きます。「髪の毛洗わないでって言ってるのにホースでジャージャーかけられて嫌なんだ。ここは何言ってもダメ」と、母が手を交差して☓印します。いつもと同じです。ですが母の顔が痩せて、表情に覇気がないのが気になりました。
「長生きして、いいことは何一つない。悪いことは何もしていないのに。死にたい」「あの時、助けられた命だよ」「あの時に死んでいればよかった。こんな所にいるなら死んだ方がまし。私に相談もしないで、なぜあんたはこんな所に入れたんだ」「待ったなしの中で、必死に私なりに探したんだよ。相談する人もいない中で、一人で決めるしかなかったの」私は、そのまま伝えました。「私にはママさんしかいない。だから元気に生きて欲しいの。神様が生かしてくれた命、生きているってそういうこと。生まれたのも自分が決めて生まれたんじゃない。死ぬのも同じ」黙って聴く母。やがて「人間はたった一人で生まれて、たった一人で死ぬんだよね」そう静かに母が云いました。「そうだね。親子であっても夫婦だとしてもね」沈黙が流れます。「あんたは二つの病気がある。それが心配」「大丈夫。それは私のことだから。私とママさんのことじゃない。ママさんは私にとってたった一人の親なんだよ。嫌だって思う気持ち、わかるよ。私だってママさんの立場なら同じ。家に帰りたい。でも家に帰っても誰がオムツ変える?誰がご飯の用意してくれる?私も探した。でもいなかった」母が溜息をつき「誰かいないかね」と呟きます。「そうだね」静かな時間が流れます。「私は意気地がないから。あんたみたいに強くないから、意気地なしでつい嫌だ嫌だって言っちゃう」「ううん、嫌だって云っていいんだよ。私だから云ってくれてるんだよね。嫌なのは嫌だよ。私はママさんが羨ましい。だって私という娘がいるから。私は自分一人しかいないもの。だけど嫌だ嫌だって云って何か変わるかな。どう思う?」静寂な時間の中で、やがて母が云いました。「あんたにおんぶに抱っこするのはやめる。私は自分で考える」母の声が変わりました。と同時に、その場に流れる何かが確実に変わりました。その時、面会時間オーバーの為に先程の男性スタッフさんが来ました。母の洗髪の話を伝えると、彼は少し考えた後に「体を洗うスタッフと洗髪のスタッフが違う」と云い「早く早くと云われるので、手早く行っていることが手荒に感じるのかも。明日、そのことをスタッフに伝えます」と云ってくれました。「であれば、ゆっくり洗いますよと声かけてください」母には「早く早くって急かさないでね」と言うと「だって・・・」母の言葉にスタッフさんと思わず笑ってしまいました。「来月また教えてください。じゃあね」笑顔で母と手を握り、施設を後にしました。嘘偽りなく、そのまま私の言葉で伝えられたこと、そして母のあたたかな手が何より嬉しかったです。千葉から急いで帰宅後に、先生のお話を途中から拝聴しました。そして気づかされました。皮膚感覚にハッとしたのです。「週二回のお風呂は、スタッフの方も順番があり忙しいかもしれませんが、少し力を緩めていただけませんか。母は皮膚が薄いので、普通に洗っても乱暴に感じて嫌なのかもしれません。或いは洗髪を自分でやらせてみて、様子を見ていただけると嬉しいです」直ぐに施設宛にLINEを送りました。嫌なものは嫌なのです。まだまだ、やれることがある。希望の光が見えました。先生、今日のお話ありがとうございます。オンデマンドで改めて最初から、きっちりと拝聴いたします。
