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今日の喜び


今年も秋田からリンゴが届きそうだ。お昼に横手市増田のおばあさんから電話があり、「少しだけれど秋の味覚を送ります。」と。そのおばあさんとは、もう10年以上前に、その地に伝承されていた民謡(「さいさい節」という「秋田甚句」になる前の古謡)を採集に訪れたのがきっかけだった。そのおばあさんのお母さんが、まだその時は元気で、その唄を歌い、娘のそのおばあさんが手踊りを披露してくれたのだ。その唄が伝承されて生きている姿をとらえることができた。それから機会があれば、その地を訪ね、全く別のことながら、「国語塾通信」を送り続けている。採集してはい終わり、という気持ちにはどうしてもなれないのだ。そして、わたしは、はじめてリンゴを栽培することの難しさ、おばあさんの家族の不幸、大事にしていたリンゴ畑を養子の息子に盗られてしまったこと、あまりの心労で病気になり、一時は神奈川の娘の家に滞在していたことなどを知る。のどかなリンゴの里も決してそうでないことや、この時代の農家の苦悩、老人たちのやるせなさなどに触れ、どうしようもない思いに駆られる。しかし、そのおばあさんは、「先生の手紙にふれると随分気持ちが楽になるのよ。」と言って下さる。今日の私のささやかな喜び!

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