“五里霧中”から
県立有馬高校の「進路ガイダンス」に、「文学」の担当者として講演してくる。(大阪の教育会社の企画)50分で、「文学とはなにか、どういう進路があるか」など話すことは、とても無理だし、その任にあらず、と断るべきかもしれないが、ひとりでも「国語好き」「文学好き」を増やしたいと思うので、構わず引き受け、もう4回目だ。毎回、「五里霧中」ってどう意味? 「ゴリラがバナナに夢中になってること?」(その写真を示しながら)って笑わせる。でも、この言葉遊びが面白いと思うのだったら、「文学」に進路を決めてもOKだよ、とにかく「言葉の力」について、いろいろ考えることが大切だと説く。しかし、将来の進路(どういう職業があるか)について話しながら、いや「職業」から進路を決めるのでなく、自分のやりたいことから「職業」を創っていくかが大切だと思ったりした。「語彙力を増やすにはどうしたらいいですか。」「本を読むことです。人と話すことです。」というやり取りがあったり、「いや、面白かった!」と言われたりして、まあうまくやれた。
有馬高は、三田市にある。三田市は、九鬼藩の城下町だ。九鬼周三というハイディガーと交流のあった哲学者の故地だ。『「いき」の研究』で有名な人だ。論理からこぼれ落ちる「偶然性」を取り上げ、徹底した個体にこだわる実存哲学だ。この夏に、『不在の歌―九鬼周三の世界』を読もうと思う。わたしも「五里霧中」だけれど、一つの指標を得た!