五月雨に物思いをれば
「古今集」、紀友則の歌に、
「五月雨に物思いをればほととぎす夜深く鳴きていづちゆくらむ」とある。
平安朝の貴族も長雨の中、日々の物思いに沈んでいたのだろうか。一般に、「古今集」の歌は、写実ではなくて、その審美的再構成を旨とするものが多い。ただ、この歌は、鬱陶しい梅雨空の下の素直な気持ち表現のように思える。多分、恋する女性のもとへ通えないくらいの悩みだとしても。「ほととぎす」の鳴き声で晴れるほどの感覚的なものであっても。やはり歌は気持ちを伝えてしまう。
友則の悩みとは、だいぶ違うが、今日は、わたしにホトトギスならぬ「朗報」が届いた。借家の連帯保証人の有無が不問になったのだ。しかし、まだ一つ、「難点」があります、と仲介業者が言う。「先生の年齢が……。」と。おいおい、それを言い出すならどうしようもない。身寄りなし、貯金なし高齢者には住む処もないのか!「まあ、わたしに何かあったら知らせてくれるということで、大家に言いますが……。」――なかなか鬱陶しい空が晴れない。(2022.5.16.)