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“リンゴ・エチュード”


とうとう伝家の宝刀を抜いてしまった。
➀リンゴをよく知らない人にリンゴを言葉で説明しなさい。
➁リンゴをよく知っている人にリンゴの話をしなさい。
 1回20分で、大学入試の小論文の指導をしてほしいという学校の依頼を受け、昨日はその2回目であった。医学部系の生徒なので、前回「高齢者と医療」という課題で書いてくるように宿題を出しておいた。ところが、最後に来たSくんは、命題文すらあやふやで、自分でも「なにが言いたいかわからん」とつぶやく始末。「スポーツ・ドクター」になるのが希望だそうで、明るくて人懐っこい。で、「それならますます言葉力が必要だね。」と言いながら、“リンゴ・エチュード”のことを話す。本来なら、50分2回分のエクササイズなのだが、それを5分で。特に➁について、
  秋田県でもリンゴは取れるんだ。平賀リンゴと言ってね、蜜が一杯で、しかも風に強く落ちないまま熟成するのだ。だから、これを食べれば、試験にも落ちないんだ、云々。
 すると、そのSくんの表情が輝き、「食べたい!」と叫び、何かに火が付いたような感じで、熱心に聴きだしたのだ。なにか小説、そうだ、池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』など読むと、言葉がどんなに大切か分かるし、文章を書く材料になるよ、と話してレッスンは終わる。
 Sくんは、教室の片づけを手伝い、職員室までついてきて、鍵の保管場所など教えてくれる。さらに、校門のところで、わたしを待っていてくれて、「先生!」と声を掛けてきて、駅まで一緒に歩いて帰ることに。その間、雑談しながら、かれとなにか「悦び」のようなものを共感する。強いて言えば、言葉を使うことへの期待と可能性か……。わたしは、こういうシーンを体験することが目標であり、人生一番やりたいことなのだ。
 血圧が高くて、降下剤を飲むと元気まで低下してしまう。ましてや猛暑の街に出ると、めまいすら感じて、これはまずいなあ、と思いつつ、高槻まで行ったのっだったが、Sくんとの出会いが「生きる力」を回復してくれた。いい仕事ができた実感は、何よりの支えだ。
 高槻から京都の「応用講座」に行き、イダキシン先生のお話を傾聴する。「気が合う」ことこそ「生きる力」の発露の条件であり、暗愚を取り除き、楽しいことを責任もってやり遂げることの重要さを体得した。“りんご・エチュード”を実践する「学びの場」を展開していきたい。

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