ラッキー!
東山・白川は、今日も豊かな水の流れだった。そこに架かる小橋を渡って、コンサート会場に向かうときもワクワク、コンサートから帰るときもワクワク。今夕の東山は、青空の下、緑も美しく、山の襞がくっきりし、輝いて見えた。やっとたどり着くことができたという思いと、この機会を経て、わが人生を再生するのだという意志があった。すると、コンサートのメッセージは、「再生」と「愛」であった。来るべきところに来ている自分の幸運を噛みしめた。
体に染み込み、癒しを与えてくれるピアノの音は、「パロール」(直接的な現前性)であって、「エクリチュール」(間接的な再現性)・言葉とはちがうのだということを、デリダのことを読んでいたので、改めて思ったりして、茫然とし眠くなってしまう。ただ、心身共に生き返る気分が醸造されて、とても 気持ちが楽になり、明るくなっていることを実感していた。隣りの席の女性の顔の表情が豊かになっているのを見て、なにかとてもうれしかった。
「愛」は「時とお金」とは全く関係ない、という第二部のメッセージが、わたしを舞い上がらせた。再読中の『カラマーゾフの兄弟』の第4巻のテーマが、ちょうどそうなので、余計に心に響いた。「そんなこと言ってもお金がなければここにも来れない」とか、「トシのせいで余裕がない」とかいう悪魔たちがすっ飛んで消えてしまった。まずは、「再生」への意欲であり、行動であると思った。
ところが、帰途、四条河原町で切符を買おうとして、財布がないのに気づく。ロームシアターの椅子に置き忘れたはず、そう思って、会場に電話したら、見つかった! 今年、三回目なのだ、財布を紛失し、すぐに戻ることは!運がいいのか悪いのか、運は決して悪くない!浮かれてないで、しっかり地に足を付けてあるけという啓示だと思うことにした。ありがとうございました。(10/13)