アーモンド並木
「経験したことを表現することが大切」とあったので
アーモンド並木
友は、いくら言っても桜だと思っている
記号論が大好きなくせに事物を見ないのだ
「ここの桜はちょっと立派ですなあ……。」
しかし、ねじより立ち寄り、やっと気づく
なにも「よき人」ぶることもないけれど……
なにも考えず、意義も思わず、歩くのがいい
場末の運河の向こうのアーモンド並木はいい
いろいろ苦悩の後の「自分の春」を味わおう
今年の神戸の桜は、やっと咲き出したくらいで遅い
しかし、東灘区の人たちは、ひと月も早く「花見」を楽しんでいる
1979年以来、カリフォルニアから深江浜の工場に移植されたアーモンド
そして、震災から復興した下水処理場の運河脇にも100本もの並木が出来た
こちらは、遅咲きで、今が見ごろ。きれいな小川までしつらえてある
去年の台風でひどく痛めつけられたと聞くからに、余計に愛おしい
運河、人工島、工場……、人為的な自然、現代人の感慨によく似合う
樹下に座して、六甲の山並みと海へ続く水路を眺め、心を養う
思えば、「桃花源」の理想郷は遠く
いまさら晴耕雨読もままなるまい
さりとて功利や実績ばかりが価値あるものか
金と健康のために身をすり減らしたくないもの
才がなくとも役立たずでも、別の「光」ありだ
同じバラ科サクラ属だから桜の国にも似合うはず
遠く異郷の春に花を咲かせるアーモンドこそ
住みにくい世に健気に生きる指針のようにも思う