ひたむきな情熱
先日新聞で、作家の久木綾子さんが、7/13に100歳で亡くなれていたことぉ知った。この人、89歳で処女小説『見残しの塔』を出版され、その2年後に『禊の塔』を出された。二冊も読んだが、やわらかい筆致で、塔(山口県瑠璃光寺、山形県の羽黒山五重塔)にかかわった宮大工たちの心情を活写し、改めて「塔」の意味について考えさせるものだった。この世とあの世の結介に立つ塔こそ、人々の暮らしと心に立つさざ波を伝えるものであり、それを見事に言葉にされたこの作家に感動していたのだった。しかも、この作家が、89歳で小説を書いたことも、100歳人生を全うされたことも、驚嘆をもたらしたのだ。今年2月までパソコンに向かって、「あと2冊は書きたい!」と言っておられた由。その「ひたむきな情熱」に与えられるものが大きい。
9月の連休こそ、去年の敵討ち、台高山脈池小屋山へ縦走しようともくろんでいたが、さすが単独行は無謀のようにも思い、さりとて誰かを誘うのも億劫なので、逡巡していたが、久木んのことを知って、来年でもいいかと思えた。山への情熱、国語教育への夢、多くの人やモノと出会いたいという気持ちは枯れていないのだから。