「甘味」が命を輝かす!
その「わらび餅」を食べた後の少年たちの快活な歩きぶりに、なぜか涙が出るくらいに感動しました。私はどうも頭人間で、味覚に疎く、食べるものにはこだわらない方でしたが、先生のお話には、いつも味覚が命を救うようなエピソードがたくさんあるので、感化されています。お陰で、コーヒーがわたしの元気と健康を支えてくれていることは実感できています。
峠の茶屋
柳生街道を笠置の方から歩いて、平城山に近づいたところに峠の茶屋がある
春の嵐のはずが、奇跡的雨は上がり、陽光も射す里山を、少年たちと歩く
学年の最後に30キロ歩行することが、いつか恒例行事になった高校山岳部
受験勉強を口実にちっとも歩かないかれらには一つの試練なのかもしれない
まるで柳生十兵衛が茶を飲んでいそうな古ぼけた茶屋があって街道の名所に
ただ数年前に草餅をふるまってやって以来、店はいつも閉まっているのだった
ところが今年はのれんが風に揺れ、例のじいさんが小屋から出てくるではないか
なんでも奈良市が新しく増築もしてくれ、先月から開業したばかりだそうだ
草餅はありませんが、わらび餅ならできます、9人前しかありませんが……
そして薄暗い勝手でじいさんが何か作り出す、お茶ならそこにありますから
出てきた餅は一人前にしては多く、じいさんの商売っ気のなさにあきれる
少年たちもぎょっとしたような顔つきだったが、黙々と食べ茶も飲んでいる
どこから? 笠置からなら6時間はかかりますやろ、柳生、南明寺、円成寺と
おいしい? 疲れていたからこの甘みがぴったりです、と少年たちが笑う
支払いを済ませ、首切り地蔵への道へ 少年たちの歩みが軽くなっている!
じいさんと少年たちの素朴さが心に染み、たしかに「峠」を越えた気がした!