「思考停止」は避けたい
もう20年前に発表された、劉慈欣の空想科学小説『詩雲』のテーマが面白い。「神と呼ばれる種族が、超テクノロジーを使って詩を書くのですが、結局、李白が残した詩にはおよばない。」と作者自身が語っている(文庫本『円』解説)が、科学技術分野の知識や言葉には、とても読みにくい小説だった。ただ、天才詩人とスーパーコンピューターの対比は、現代のAIと人間の両立を考える上で、いい問題提起だった。
AIには不可能で、私たちにしかできないことは何か。それは「責任を取る」ことかもしれない。これは、失敗や不祥事に謝罪することではない。結果を自分のこととして引き受けることだ。その意味で、責任をとれるのは、不確実性のあるときに、リスクをととって自発的に意思決定した人だけだ。――今朝の朝日新聞に竹内幹氏が寄稿していた。(経済季評)「意図をもって選択する役は、人間にしかできない。」とも。人間の内面の言葉化は、AIにもできないということか。
だからこそ、「思考停止」にならないようにしたい。とにかくあの人の言うことには従おうとか、「運命」とか、「宿命」とか、「天命」とかについて、分かったつもりになることもやめようと思う。貧弱な頭脳ながら、自分の言葉で考え、自分の意志で行動したい。勿論、人の言葉も十分に受け止めつつ、「会話」を重ねることによって、正しい「意図」を持つようにしたい。(5/6)