「八割が北風で、二割がやっと南風」
小野寺史宣の小説『ひと』の中で見つける。逆境の中で飲食店を維持する苦労を語る場面だが、言葉はふっと飛翔して、自分の今日の心に止まり、心を明るくしてくれる。コロナ禍の現状の中、うまくいかないことがあまりにも多くて、気が滅入ってしまう日々だが、「二割の南風」があれば、十分生き延びていけそうに思えるからだ。朝風のさわやかさ、ハナミズキの白さ、新聞で読み共感したこと、知人からの手紙やメール、高校生の発言、小説の面白さ、鳥釜飯のうまさ――どれもがいま生きていることの喜びを感じるし、もう少し頑張ってみよう!という気持ちをもたらしてくれる。