風の音
3月11日午後2時46分。黙祷のサイレンが鳴り、目を閉じ、黙祷を捧げます。海からの風が吹きます。この音は子供の頃に知っていた音であり、被災地にて瓦礫の山となってしまった地に立った時に聞いた風の音です。たくさんの死霊を見ました。言葉に表し尽くせぬ惨状を目の当たりにし、神経張り詰め、被災地を車で走り、ホテルでは一睡も眠れずにまた被災地へと出向き、精神も体も痛みきってしまいました。初めての先生の盛岡での東日本大震災チャリテーコンサートにて胸から死霊が次から次へと抜けていきました。アンコールの時、大地からともなく、空間ともなく、自分の体感では、右後方から、「我が君、お待ちしていました」との魂の声が聞こえ、それこそどっきりと音が聞こえる瞬間、この世のことか夢の世界のことかと自分がどこにいるかさえわからない状態でした。東京への帰路は死んだように寝入り、この世に帰らぬ人間となるのではと感じる程、死んだように寝入りました。お一人の尊い生命がお亡くなりになる時、時代が変わる程の衝撃を経験しています。震災では、たくさんの尊い生命が犠牲になり、言葉に尽くせぬ深い悲しみ、苦しみさえも感じなくなる苦しみを被災地で経験しました。それでも私の生命は被災地へ向かうのです。向かうことをやめられないのでした。先生にこのことをお話させていただいた時、だったら、やることがあるという内容のお言葉をおっしゃっていただき、胸の内から光が生まれ、涙こみ上げたのでした。被災地にてやることがあるならば。。。と言葉によって表し尽くせない気持ちがこみ上げてくるのです。
震災が起こった3月11日、町が9割壊滅した山元町にて、黙祷を捧げる瞬間、海からの風の音がきこえ、生命の内に風が吹きます。この音は時間が止まった音であり、たくさんの魂が共にあることを感じます。先生がこの地に来てくださり、たくさんの魂が報われていることを感じます。以前、夜中に福島原発がある地から仙台方面に向かい、車を走らせていると、夜の闇の暗さではない暗さに身が震える恐怖を感じました。突然、明るい光が見え、あたり一面光り輝く地が見えました。山元町でした。いちご農園さんのいちごハウスに先生のサウンドが流れているので、こんなにも空間が明るいことに真の希望を見ました。人間が生きていける世界は光の世界と生命の奥深くで合点がいきました。光の世界を広げることが何より日本の未来を作ると見えました。
岩手県の被災地では瓦礫の山を歩き、人を訪ねました。途中、山に入り、墓が倒れていたり、木が倒れていたり、とても恐ろしい場面を見ました。山元町では初めていちご農園の代表を訪ねた時、カーナビは案内できず、私はいちごハウスを一軒一軒訪ね歩きました。ハウスには誰もいないので、いちごに向かって「ごめんください」と言いながら歩いたのです。最後のハウスで代表にお会いできました。私は何処に来ても飛び込みをするようになっていると苦笑しながら歩いたことを思い出します。山元町に結工房を作り、全国からお越しくださる方々と共に震災の日を迎え、共に過ごせていただきましたことに感謝申し上げます。最後のビデオ講演会、先生の特別講演を共にさせていただき、ぬくもりある時を経験でき、とても心豊かに過ごせました。先生から出来上がった物だけ見ていると、できたと見えるけれど、色々なことがあり出来上がっていくという内容のお話をお聞きしている時、被災地で何度も叫びながら精神状態もぎりぎりでやっていたこと等思い出します。それでも先生がおっしゃってくださったように、生命が被災地に向かっていくことで結工房まで行き着きました。今もいろいろあるのですが、ロシアへと向かう自分を自覚しました。今日もいちご農園の代表は、ロシアは早くやめた方がいいと笑っておっしゃいました。私は心の中でやめられないのです、と答えていました。やめられるのなら辛くないのですが、やめられないのです。被災地へ行くことをやめられなかったようにロシアへ向かうことを自覚した時、何かになっていく時は向かう生命があると気づきました。一人一人が真の自分を実現していく道をおおいなる存在とひとつに生きていける時です。先生が一杯一杯丁寧に手抜きせずとおっしゃり淹れてくださった極上のコーヒーをいただける恵をたくさんの方々と共に経験でき、とてもありがたいです。極上のアイスコーヒーから始まった1日は結工房2周年記念焙煎コーヒーで締めくくられました。覚醒の味です。
盛岡への道は雪が降っていました。今も外は雪が降り続いています。北の大地に来させていただき、考えること多く、取り戻す人間のぬくもりあり、愛あり、とても豊かでありがたいです。ありがとうございます。