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ピンクの帽子


朝から吹き荒れる暴風雨の音を聞きながら、心澄ましLIMUの豆を挽き、大きく深呼吸をしながらコーヒーを淹れました。どんな時も心静かにいることが大事であると分かります。テレビをつけて台風のニュースを気にして見ていましたが、頭が痛くなると同時に追い立てられるかのように気持ちが焦ってきます。見れば見る程、疲弊してくるのでスイッチを切りました。

ふっと顔をあげると、ウラジオストクに到着した翌朝にホテルのお店で買った、ピンクの帽子が目に入りました。思わず微笑んでしまいます。偶然目に入り一瞬買うことを躊躇いましたが、被った時に頭と一体化し明るく灯る光を感じたのです。その帽子を被って、ウラジオストクの市内観光が始まりました。風に吹かれながら今まで見たことがない美しい青い海の前に立つ時、波を眺め、かもめの姿を見つめ、白い船が浮かぶ海と一つになっていました。映る写真の姿も、そのまま現れています。とても不思議な感覚です。偶然出会ったピンクの帽子は、暖かいだけでなく私と一つとなり、周りと一つになったのです。幼い頃に戻ったかのように、何もかもが発見と驚きで心が躍り嬉しくて堪りません。スーパーマーケットの前に小さな子供の遊び場がありました。カラフルな色に彩られたその世界で、何人かの小さな子供が、滑り台やブランコで遊んでいます。ふっと私もブランコに乗ってみたくなり漕いでみると、身体が宙に浮き空間と一つになるこの身の軽さに笑いが止まりません。童女のように笑いが弾けるのです。抜けるような青空の下で、友達と弾ける笑い声をあげる童女がそこにいました。ピンクの帽子は、同じツアーのバスで話したことがない色々な方たちと素直に繋いでくれます。それぞれの方たちが見せる瞬間瞬間の輝く本来の顔をすかさずキャッチし、屈託なくそのまま話す時の会話の弾みを、私は初めて教えて頂きました。相手の方の顔は、まるで別人のように変わります。つい、「戻っちゃ駄目だよ」と言ってしまいます。人間は、いくつになっても誰もが幼子の輝きを瞬時に取り戻せるのだと嬉しくなります。先生が以前から仰っている人間とはを、ウラジオストクにて経験させて頂きました。

気づけば、様々な海の写真を撮っていました。ホテルの部屋からも、街中でも至る所に海が身近にあり、心が安らぐのは海と一つだったのかもしれません。そのきっかけを教えてくれたのは、ピンクの帽子でした。とてもよく似合うと皆さんに言って頂き、初めは照れ臭かったのですが、いつの間にか自分と一体化していたピンクの帽子です。不思議な出会いと共にウラジオストクから日本に一緒に来て、今私の部屋で鎮座している姿を見ると、まるで王冠のようであり、おとぎの国の魔法の帽子のようでもあります。母は「いい年をして」と苦笑しますが、私には愛おしくて堪らず、つい眺めては微笑んでしまう大切なピンクの帽子です。目を閉じれば、何と表現していいか分からない美しい青い海と、抜けるような青空が広がります。

台風は無事に通過したのでしょうか。ガラス窓を荒れ狂うかのように激しく叩きつけていた音が、いつの間にか止んでいます。先生、高麗さんが無事に日本に帰って来られることを、また台風の影響が小さくて済みますようにと願う夜です。

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