朝を連れてくる
三鷹へとむかう途中、ふと電車の窓から見えた風景は、ほんのりと夕焼け残る夕暮れに、黒々とシルエットで見える木々の美しい光景でした。ふと、今日のコンサートはどれほどかとドキドキとしました。
一音目が身体に響き、気がつけば音の中におりました。
演奏が進むにつれ、乾いた地面に水が降り注ぎ、しみこみ、しおれかけた花がみるみるうちに頭をもたげ復活するようでした。ここが愛のフィールド。愛のフィールドの中で人は蘇り次へと向かうのですね。ここにはすべてがありました。ここからはじまり生まれる。
高校生くらいの時、ふと夜中に目を覚ますと音のない漆黒の闇の中にいる自分を感じ、もしかしたら夜が明けないのではないのか、このまま闇の中なのかという不安に襲われることがありました。それでも闇の中にいると、あるとき突然、ピーッと一羽の鳥が啼き、それに続き鳥たちが啼き始め夜が明け始めるのでした。そうすると安心してまた眠れたのです。闇の中で一羽の鳥が啼き朝を連れてきてくれるように、この世の中で先生が初めに啼いてくださった。それに続き小鳥たちがおのおの一斉に啼きはじめれば夜明けは来ると、あのときの光景が重なりました。本日もかけがえのないコンサートをありがとうございました。
後藤美香