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望花


晴れた東京から雪景色の盛岡にやって参りました。岩手県に入ると、雪が横殴りに降っていました。この風景が子供の頃から苦手でした。延々と春が来ない恐怖を感じるのでした。ただただ耐え忍ぶ人生を生きていく不安を感じるのでした。恐いと叫ぶと先生からうるさいと言われ、雪の中で国を創ったのに、何言っているのかと正されました。真にと頭を垂れざるを得ません。変わらねば生きていけない時を迎え、即変わる気になったことには自分でも驚きました。車のフロントガラス越しに見える風景は高句麗の地に行く時に通った途中の町で見た風景とよく似ていました。「望花」という名前の地区です。以前「大地の声」の時に詩に詠んでいました。さわやかな春も暑い夏の時も、実りの香り漂う秋の時も冬の寒い時も、「望花」と書かれた地名を見る度に、望みを感じ、見える光景は貧しい中国の田舎の風景でしたが、望みはあると感じながら通ったのでした。冬に高句麗の地に行った時、望花地区にて今日のように雪が横殴りに降り、辺り一面真っ白で、前が見えない中をどこまでも続く長い道を一人の女性が歩いていました。日本の道とは違い、車で走っても果てしなく続く道を雪の中を歩き続けているのです。何処へ行くのかと想像しました。家に帰るのかと想像していました。家に帰るにしてもこのような道をずっと歩いていくことにこの地で生きる人のたくましさを感じ、自分を恥じたのでした。今日はこの時のことを鮮明に思い出し、雪が恐いと叫ぶのは今日で終わりにしようと決めました。途方もない気持ちになる程恐いと感じる時があります。が、終わりにします。過去の何かを背負って、本来の人間ではなくなっている状態は悪い芝居をしているような偽物の人生となります。本来の人間のはたらきを取り戻し、新しい未来を創る人間とし生きていきたいです。余談ですが、この時に女性が来ていたダウンコートはロングでした。冬の中国では皆がロングの黒いダウンコートを着ていました。それから私は、ロシア、サンクトペテルブルクに行くことになった時にロングのダウンコートを探し続けたのでした。日本にはないとの返答がきた時には驚きました。が、やっと見つけたのです。今日着てきたロングのダウンコートは、厳寒のロシアウラジオストクへ行く時や真冬のモスクワへ行く時に着ていった世界最強のダウンコートです。寒さ対策は万全にという気持ちがありますが、先生はこれくらいの寒さはなんてことはないとおっしゃいました。雪国で生きる人は私の格好を見れば大げさに感じるともおっしゃり、なるほどと自分でも気づきました。寒さには恐怖を感じています。阪神大震災の時も、電気もガスも当然使えなくなり、夜の寒さは尋常ではありませんでした。冷え切ってしまいました。東京に帰り、一週間はお風呂に入っても体が温まることはありませんでした。東日本大震災の時も雪が降る中を避難されている方々の映像を見る度、身が痛んでいました。自分の苦手とすること、弱点はなんでもなくしていくことがこれからの時代を生きていけることとわかりました。

晴れた東京を発った時は昨日三鷹での先生のコンサートの時のどこまでも澄んだ透明感あふれる美しい音を思い出していました。空間も見たこともない程清らかに澄んでいました。何もない空間となり、自分の内にも何もなくなった時、ウクライナではたくさんの人が亡くなっているということが耐えられず、突然自然にこうしてはいられないと立ち上がりそうになった自分に驚きました。コンサート中ですので、抑えましたが、すぐにでも何かをしなければいけない気になり、動こうとしたのです。自分の気持ちに気づきました。なんとかしたい気持ちが自分の気持ちですので、体が痛くて怯えて生きている場合ではないと感じたのです。先日、本社の近くで爆発火災事故があった時、強い衝撃があり、爆撃を受けたのかと感じたとスタッフから聞きました。そしてウクライナでは常に爆撃の恐怖に脅かされ暮らしている人々のことを考えたと話していました。どこまでいっても自分が当時者でないと想像するよりないのですが、起こる現象から、今年はこのような生き方ではなく、何があっても乗り越え、創る側で生きることが必要と考えます。理由のない苦手意識も単に苦手とか恐いと思っているのではなく、紙に書き出し、言葉に表し、なくしていかねばならないと感じました。真に何もない状態で生きることが新しい時代を生きていくのだと考えます。

明日は今年初めての東北センターでの催しです。私の「本音で生きてください」講演会を2時から開催させていただきます。5時からはいだきしん先生の「死について」です。大変楽しみです。皆様と共に経験できますことに感謝します。ありがとうございます。

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高麗恵子ギャラリーにて
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気持ちに支えられ
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美しい5月の風 -3