死中に活を求める
今日はまた明晰な世界から一転し、まだ見ぬよくわからない世界に迷い込んでいました。朧気に、とぎれとぎれに表れる、全身の統一した強さ、美しさ、血気盛んな姿が、まだどこか自分には程遠い世界に感じていました。
私にとっては第2部の始まりはかすかな不安の中にありました。不安の元は子宮に響く音にありました。自分がカプセルの中に入っているかのように、何かに覆われていることを自覚していました。腰から下に引きずり下ろす何者かとの闘いが始まっていました。腰が板に張り付けられたように硬直し、不安はいつしか恐怖へと変わっていました。この恐怖は子供のころからある恐怖感です。私は負けそうでした。恐怖は思考を停止させ、判断を狂わすことをわかってきました。過去は意識の記憶以上に、肉体の内部に残っているのです。あまりの恐怖に身体が震え、誰に対してというわけでもなく、これ以上、まだ私に生きよと言うのか、と心の中で叫び声をあげていました。何度も何度も、まだ生きよというのか、と死ぬことも許されない苦しみに泣き叫び、もがき苦しみ、どのくらい経ったときか、私にも人を愛する能力はあるのよと、何かに対して、誰かに対して、言い放つように自分の気持ちを口にした瞬間から光が見え始め、私にも愛する人はいて、愛する人のためにどんな自分へとも変わってゆくんだと、前を向きはじめていました。一人の女性がこの世で美しく生きるにはどうしたらよいのか教えてほしいと、なすすべもなく、愛する人に語りかけていました。運命のないこの生命は、正しいこと、本当のことさえ了解すれば、正しく新しく生きていけることを昨日のコンサートで知ったことを思い出していました。一人の女性がこの世で美しく生きるとはどういうことなのか、まだ見ぬ知らない世界があるのだから、生きなければ、生きていかなければならないと、ひたすら強く芽生える気持ちが生まれていました。真っ暗闇の深海にこの世とは思えぬほどの美しい生き物を探し当てるように、この右も左もわからない暗黒の中に、まだ見ぬ美を見つけるのだと、そう腹を決めていました。子宮の裏側、さらに奥の奥まで愛に満ちなければ幸せには生きられないと痛いほどわかるのです。
今日もありがとうございます。