結晶の輝き
三鷹でのコンサートをありがとうございました。
第一部では、体の時間がとまったようでした。時に雑念を追い払うことに一苦労する頭も、本日の演奏では余計な思考が浮かぶこともなく、けれども意識ははっきりとありました。みぞおちの辺りにきゅっとした体感と熱いものを感じながら、ピアノの音だけが動きとして流れのようにやって来ては過ぎ去っていきました。そして、第一部が終演を迎えると、半ば放心状態で暫く身動きができませんでした。
第二部では、体の中の「空」、「空」の中の「美」といった内容の奥義に迫るメッセージに思わず感激しました。演奏が始まると第一部と同じ状態が暫く続きました。しかし、ある瞬間からピアノの音が一変しました。体の中にもうひとつコンサートホールがあるような体感でした。低音を中心に音がホール全体に響き渡りました。北極域の氷床の如く壮大な轟は、空間の静寂を力強く打ち破りながらも、氷床下に広がる深海の世界にゆったりと沈みゆく氷の、透明な結晶の輝きのようでした。
ありがとうございます。