内側から壊す
8月6日、府中の森芸術劇場でのコンサートをありがとうございました。
第1部では、ピアノの演奏が始まると、もの凄い速さで絶え間なく変化する宇宙空間を経験しました。それは、どこまでも続く空間を、自分が光速で突き進むかのような経験でした。変化は激しく動的で躍動感に富んだ多様なエネルギーが乱舞するのでした。しかしながら、そこはどこまでも可能性に満ちた空間でした。
第2部では、再び悪い癖が出ました。ホール内のすぐそこで躍動する愛を経験できる機会が繰り広げらている一方で、自分といえば、心臓のあたりがしんどく、ピアノやパイプオルガン音が遠のいてしまうような状態にあるのです。前日のコンサートでも同じような状態から抜け出すのに多くの時間を要しました。頭が原因であることはわかっています。過去の記憶や意識、観念、対象化、それら全てが命の働きを疎外し結果として体を痛めるのです。もういい加減にこのような生き方はうんざりで、やめたいという気持ちが強くなりました。そこで、盛岡のコンサートで経験し表現として生まれた「命は愛に向かう」状態を思い起こしました。抜け出すための手がかりとなるかもしれないとふと感じたためです。その経験とは、本来命は愛に素直に向かうとてもシンプルな状態にあるということです。その時の感覚や状態を自分の中で再現しようと思い起こしました。すると、遠のいていたピアノ音が戻り内側に広がり始めたのです。一度経験したことを手がかりに壁を突破することができた瞬間でした。そして、このことを経験するや否や「内側から壊す」という表現が生まれました。内面世界から観念や意識など頭でつくりあげられた限界のある世界を壊していくより先はないという気持ちが力強く湧き上がったのです。そして、このように内側から生まれたことばの中身については、これまでも自分の中では漠然とながら自覚してきたつもりであっても、意外なことにことばとして表現されて初めて明確化され己の力となると感じました。ことばによる表現は、まさに創造的活動であるという気づきを得ました。
ありがとうございます。