今の状態
ある言葉を受け流したつもりが、棘のように胸に突き刺さったままでした。左胸の痛みを抱えたまま、先生のコンサートに臨みました。蜘蛛の巣のように張り巡らされた、白い網目だらけの自分の胸が見えます。先生のピアノが、その網目の中にどんどん入り込んできます。それが、あまりにも痛くて、辛くて、じっとしているのが耐え切れない程でした。言葉が凶器として不意に投げつけられる時、どう自分の身を守ればいいのでしょうか。ピアノの音が繰り返し執拗に感じて苛立つ状態が、今の自分の状態であると認識しつつも、思わず左胸に手を当てて前屈みになってしまいます。どれくらい耐え忍んだのでしょうか。蜘蛛の巣は取り払われ、前を真っ直ぐ向いて音を受け止めていました。強くなっていました。命救われたと感じ、第一部が終わりました。その後は、今起こっている様々なことを考えていたようでいて、何も記憶がありません。今までと何一つ変わらない世界と、何もかも変わってしまった世界の中で、自分がいる現実の世界が幾層にも見えます。時々、訳が分からず突然気が滅入ります。今まで何を見て、何を信じ、何を必死にやってきたのだろうかと。そして、自分はこれからどこに向かって行くのだろうかと。管理社会、監視体制、虚構と現実の世の中全体だからこそ、自分を見失わないようにと精一杯の中で、一つ一つ真摯に自分が向かい合っていこうと決めました。コンサートがあり、オンデマンド配信で何度も拝聴できることに感謝します。ありがとうございます。