コンサートの日
コンサートの朝から、いつもと違って大変でした。毎朝飲む健康ジュースの大きなボトルを、いつものように振った瞬間、閉まっていたはずの蓋が吹っ飛び、濃縮された紫色の液体が勢いよく飛び散ったのです。あっという間に、敷き詰めカーペットが点々とベトベトの紫の大きな染みと化しました。慌ただしい出勤前の朝の突然の出来事に、半べそをかきながら床に這いつくばって拭くことから始まったのです。時間がないため、そのまま会社に出かけましたが、前日の朝に蓋を閉めないまま冷蔵庫に入れたのかと考えても、今まで一度もない事なので謎のままです。「しっかりしろ」と言い聞かせるスタートでした。
何とかギリギリ、開演に間に合った第一部です。メッセージをお聴きしながら、「決断を要します」との言葉が心に残ります。演奏されていらっしゃる先生の姿を拝見し、今の自分が申し訳ない気持ちで一杯となりました。演奏は、限りなくやさしい、限りなくかなしい、限りなく透明な世界で、不思議な感覚です。椅子に座りながら、眩暈が起こる感覚が起こり、掴みどころがなく、ふわふわと宙に浮く感じのまま、休憩となりました。第二部は、もっと不思議な神秘的な経験をしました。とても静かです。まるで音のない静寂な世界に、自分が包まれているようです。体の中心から放射線状に広がる、この感覚は何なのでしょうか。座り心地が悪く、体の中心をどこに置いていいのか分からず、落ち着かずに何度も姿勢を正し直していました。突然、亡くなった父の最期の場面が現れました。真夜中の出来事だったので、私は母からの電話で知り、実際にその場面には居なかったのです。ですが、今目の前で起こっているかのように、父が「ありがとうね、ありがとうね、ありがとうね」と母に言いながら、ゆっくりと倒れて逝く姿が見えるのです。続いて、16年10ヵ月ずっと共にいてくれた、愛犬の最期の場面までが見えるのです。瞼が熱くなります。コンサートは最後まで静寂な世界でした。帰宅後は、本当に眩暈がして、気持ちが悪くフラフラでした。そのまま横になり、朝を迎えました。一体何を経験したのでしょうか。今も静寂な心でいます。